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ハンセン病家族たちの物語 昨年5月のハンセン病市民学会に合わせて出版された『ハンセン病家族たちの物語』(世織書房刊 定価4000円+税)を読みました。著者は東北学院大学准教授の黒坂愛衣さんです。現在は仙台市在住ですが、ハンセン病首都圏市民の会の元会員です。

聞き書きに登場する12人は「ハンセン病にかかった肉親(親や年上のきょうだい)がおり、かつ自分自身はハンセン病にかかっていない人たち」です。この人たちはハンセン病回復者本人と同じ過酷な被害を受けています。身内に回復者がいることをひた隠しにしたために、親は死んだこととするなど、「嘘の綱渡り」をして生きてきました。親が療養所に収容されると家族はバラバラになり、子どもは親戚や施設で育てられ、家族の絆は断ち切られました。このような境遇を明かすのは勇気のいることで、話す側も聞き取る側にとっても、つらい作業だったと思います。本を書き上げるのに10年かかったそうです。

これまで当事者の証言集は多く出版されていますが、その家族の証言を著したのはこの本が初めてといっていいでしょう。10年の時間がこの労作を生んだと言えます。

今年2月に元患者の家族が損害賠償や謝罪を求めて、熊本地裁に集団訴訟を起こしました。第二次も含めると原告数は568人です。なぜ家族が提訴したかを理解するうえで、この本は参考になるでしょう。