ニュースレター No.4 (2007年8月発行) (1)(2)(3)(4)
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二度目の隔離を黙認してはならない

酒井 義一

日本の植民地時代につくられた台湾のハンセン病療養所「楽生院」が、強制退去の危機に直面しています。日本型の隔離政策によってふるさとを奪われた方を、「第二のふるさと」である療養所からふたたび退去させることは二度目の隔離です。そのようなことは絶対にしてはならないことです。
動きが始まったのは2007年3月2日。台湾政府は楽生院内の地下鉄工事をすぐに始めるよう地方自治体に通達し、入所者に一週間以内の退去を勧告しました。台湾政府の主張はこうです。「公共の福祉のために少数の犠牲は仕方がない」「“伝染病予防法”に基づき入所者を新病棟に移動する」そこには公共の名のもとに少数者を踏みにじる冷淡な姿勢があります。
一方、台湾弁護団や入所者(自救会)は、計画の変更とともに、ハンセン病隔離政策に対する謝罪と国家賠償、楽生院取り壊しの撤回、歴史的建造物としての保存と在園保証を要求しています。楽生院入所者で自救会会長の李添培さんは、「楽生院は、日本の植民地時代に日本の「らい予防法」によって作られた療養所。解放後も台湾政府は、その政策を引き継いで人権を侵害し、私たちの人間としての尊厳を侵してきた。台湾政府は何も責任を取らない。私たちは、死んでもここを立ち退かない」とコメントを発表しています。
私が訪問した4月中旬、楽生院内には強制退去に反対する学生らが園内に寝泊りし、24時間体制で監視・支援活動をしていました。その反面、退去に賛成するデモも地元の有力者の動員で行われるなど、とても緊迫した状況です。
今回の動きの問題点は、台湾政府が強制隔離政策の歴史的責任を認めていないということ。そして、ハンセン病に対する偏見・差別に基づいた形で強制退去という愚行が進められつつあることです。
退去期限の6月16日、大きな動きはありませんでした。しかし、自救会側は、9月ごろから再び退去の動きがあるのではとみています。支援する学生たちは7月中にも大きな反対集会を計画中とのこと。気になることは人々の無関心さです。4月〜5月はマスコミにも取り上げられ大きな問題になったのに、時がたつうちに人々から忘れられつつあるということです。台湾楽生院の強制移転問題は、日本のハンセン病療養所の未来にも通じる質を持った問題です。
楽生院の人々を、孤立させてはならない。そのような思いをもって台湾の状況に注視することを、今ここに呼びかけます。
人間への隔離を、再び黙認してはならない。そのような動きを、一人ひとりの中につむいでいきたいものです。

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