ニュースレター/IDEA国際会議 in インド特集号 (2008年4月発行) (1)(2)(3)(4)(5)
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国際ハンセン病学会&IDEA国際会議に参加して

理事長 森元 美代治

インドのハイデラバードで1月29日から2月4日まで開催された第17回国際ハンセン病学会&IDEA国際会議に参加してきました。

今回の会場となったハイデラバードは、南インドのデカン高原にある、世界的なIT産業の集積都市です。元々数学の“0”を最初に見出した国だけあって、近年はソフトウエアの開発で世界をリードしています。メインストリートでもほとんど信号がなく、車やオ−トバイ、三輪車等がひしめきあって走っているので、通りの向こう側に渡るときは、怖い思いをしなければなりませんでした。超近代的なビルやホテルがあるかと思うと、街の至るところで物乞いを見かける国柄でもありました。

世界で患者がもっとも多いインドでの開催ということで、60カ国から医師、医療従事者、研究者、社会学者、快復者、宗教者、支援者、マスコミ関係者等、1800人が集いました。うちIDEA関係者は33カ国170人でした。インド各地から快復者100人が参加できたのは、IDEA代表のドクター・ゴパール(IDEAインド)の長年にわたる地道な活動の成果だと思います。日本からは総勢25人ほどで、IDEAジャパンの宇佐美治さん(長島愛生園)、柴田すい子さん(退所者)、私たち夫婦、村上絢子さん(事務局長)、湯浅洋さん(前国際ハンセン病学会会長)、蘭由岐子さん(研究者)、山口和子さん(笹川保健協力財団)の8人が参加しました。その他、 青木美憲先生、難波幸矢さん、村井容子さん、岡本澄子さん、細田みわこさん、グレッグさんたちがサポートしてくれました。

ハンセン病の医学は日進月歩で、世界中の研究者によって解明されつつありますが、偏見や差別の社会的な問題は遅々として進まない、ということから1998年の北京大会からIDEAも参加し、社会的側面について当事者として発言するようになりました。私はブラジル大会、南アフリカ大会にも参加させてもらいました。

今回の大会は多数の分科会に分かれ、9時から18時頃までハードスケジュールの中、IDEA国際会議も同時並行的に行なわれたため、専門家たちのプレゼンテーションにはほとんど参加できなかったのは残念でした。

スーダン、台湾、ギニアビサウがIDEAの新メンバーに加わり、また軍事政権下のミャンマーから初参加者もあり、皆さんから盛大な拍手で迎えられました。各国IDEAの活動報告や個人の体験発表等、盛りだくさんでしたが、全体会議ではIDEAセンターのアンウエイ・ロー事務局長から資金難である旨の報告もあり、今後の課題となりました。

今回特に印象的だったのはアフリカ諸国の女性代表やネパール代表の女性たちの発言でした。彼女らは宗教上あるいは国情から三重四重の差別に苦しんでいます。(一)にハンセン病であること、(二)に黒人であること、(三)に貧乏であること、(四)に女性であることに基因する差別です。一夫多妻が女性蔑視の大きな原因になっているとか。しかし、それにもめげずに健気に、逞しく生きている彼女らにアフリカパワー、女性パワーを見せつけられる思いでした。

IDEA ジャパンが奨学金等の支援をしているインド、ネパール、フィリピン、中国の各IDEA代表と懇談し、支援金の使われ方、奨学生たちの生の声などを送っていただいて、適宜IDEAジャパンのニュースレターに掲載したいとお願いしました。

▲ハイデラバード近郊のハンセン病の村で
最終日にIDEAメンバーだけで、ハイデラバードからバスで約1時間半の郊外にあるハンセン病コロニーを訪問し、村人と交流しました。村人400人のうち200人が快復者で、200人がその家族です。

日本の療養所のような一見長屋ではなく、個々に独立した家屋で村社会を構成していました。食べ物や衣類等の洗い場は、共同の水場を利用していました。私が訪ねたお宅は、中学生の女の子2人と、両親の4人家族でした。6畳一間ほどの小さな家で、姉妹は長椅子で寝て、両親は床の上で寝ているとか。ガスコンロ1穴と、14インチほどのテレビがあるだけで、他には何も家具はありませんでした。ただ元気な子どもたちは,私たちの来訪を待ちかねていて、着飾って,いろいろな質問にも答えてくれました。昔の日本の農村を見るような印象を受けました。

オランダの慈善団体からの助成によって治療費は無料で、大勢の子供たちに患者は一人も出ていませんし、皆元気に学校に通っていました。生活は決して楽でなく、地域の工場に勤めて収入が多少でもある家族は良いほうで、後遺症などで仕事につけない家族は、街に出て物乞いして生計をたてています。

今回のインド行きで、この村を訪問できたことが私にとって一番心に残っています。元気な子どもたちと別れを惜しみながら、村を後にしました。


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