ニュースレター No.16 (2013年09月25日発行)
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当事者の声を歴史に刻む世界的プロジェクト/「 春うらら 講演&コンサート」に参加して

黒坂 愛衣(埼玉大学非常勤講師)


▲春うらら 講演&コンサートには、荒天にもかかわらず園の内外から大勢の人が集まった。

4月6日の荒天のなかを出かけた、「春うらら 講演&コンサート」の感動、いまだ醒めやらず……。

講演されたアンウェイ・ スキンスネス・ ローさん( 国際コーディネーター)は、世界各地のハンセン病施設で暮らす人々のライフストーリーを記録に残す、大きなプロジェクトをされてきた方。とうぜん言語は何カ国語にもなるので、その言語を話せる人が聞き手をつとめることになる。ハンセン病を知らない若い世代や、もっとすごいのは、自分の親や祖父母がハンセン病だったという「第二世代」「第三世代」が聞き手をつとめ、このプロジェクトを通して人のつながりが生まれているということだ。


▲コンサートの後、お礼の挨拶をする森元理事長と入所者から
渡された花束を手に、笑顔を見せる沢知恵さん
/多磨全生園コミュニティーセンター

これまで、ハンセン病の人々の存在は、記憶と歴史から消されてきた。たとえば、世界最大のハンセン病患者収容がなされたフィリピンのクリオン島では、かつて何万人と収容されたはずなのに、入所者の墓碑は200 ほどしかない(!)。別の国の収容施設では、入所者の墓はあっても、ぜんぶ無名の墓であった。その反省から、現在は、かつて入所していた人々の名前を刻む碑を建てる取り組みがされているとのことだ。

びっくりしたのは、ラトビアのタルシ病院で、ハンセン病者として収容され長年生活してきた男性(ハンセン病自体はもう随分前に治癒していた)が、「2週間以内に出て行きなさい」と、いまになって立退きを迫られている状況があること。施設で生活するハンセン病回復者の「生存権」が脅かされている事態は、日本の療養所や、台湾の楽生院だけでなくて、世界的な広がりがあるのかもしれない。

「聞かれてこなかったハンセン病の人々の声を歴史に残す」「人のつながり、コミュニティを守る」といった理念に、深く共感した講演でした。

沢知恵さんのコンサートは大盛況! わたしが参加している「ハンセン病首都圏市民の会」代表の鈴木禎一さん(97歳)は、車椅子で来場されていた。コンサート後にごあいさつすると、弾けるようなニコニコ顔(おいおい、いつもの会議のときには、そんな素敵な笑顔、見たことないぞ……笑)。わたしもすごくエネルギーをもらいました。音楽の力って偉大だなぁ。


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